第97章 良いところは全部息子が持って行っちまった、私は何をアピールすりゃいいんだよ

「なっ……中野社長、私、なんでもありませんから……お金なんて振り込まなくて大丈夫です……」

中尾美希はそう口走った瞬間、しまった、と胸の奥がひやりとした。

金で片づけられるのは癪だ。けれど最後に何も残らなかったら、それはそれで怖い。

数万円。

もう何年も村に帰っていないし、空腹で眠れない夜なんて久しくない。

それでも――貧しさに怯えて生きてきた彼女にとって、金だけは裏切らない。いちばん重く、いちばん信じられるものだった。

「中野社長、ほんとに平気です」

中尾美希は涙を瞳の縁に溜め、いっそう健気に見えるよう声を震わせる。

「栞さんも……たぶん、気分が悪かっただけで……」

そう...

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